高周波加熱とは高周波の技術

誘導加熱と誘電加熱について

高周波加熱について誘導加熱、誘電加熱の原理から、出力・周波数・加熱コイルなどの基本要素、装置構成を説明しています。
IH加熱やIHヒーターとは高周波誘導加熱と同じでことです。 通常の誘導加熱では加熱コイルの真ん中に被加熱物(金属)を置きますが、IH調理器の場合は構造上コイルの上に金属が置かれます。また、電子レンジは高周波誘電加熱と同じ原理です。

電磁波と高周波加熱

・ 電磁波は、ラジオ、テレビ、X線レントゲン、宇宙から飛来する宇宙線、自然界に存在する赤外線や紫外線など、電気の波の総称をいいます。
・ 高周波とは、電磁波の内で電波と呼ばれ分類される中の一部の周波数帯を言います。
・ 電磁波工学では、周波数が3KHzから300MHzを高周波と呼びますが、高周波加熱の分野ではその前後を含めた周波数を用いた加熱の総称として用いられます。
・ 高周波加熱の英文呼称は、アジアではHIGH FREQUENCY(HF)、欧米ではRADIO FREQUENCY(RF)の使い方が一般的です。

電磁波の呼称と区分 周波数 波長 通信・放送用 工業用
ELF 極超長波 ~ 3kHz ~ 100km 船舶無線 低周波誘導加熱
VLF 超長波 3kHz ~ 30kHz 100km ~ 10km 船舶無線 高周波誘導加熱
LF 長波(ラジオ波) 30kHz ~ 300kHz 10km ~ 1km AM放送 高周波誘導加熱
MF 中波(ラジオ波) 300kHz ~ 3MHz 1km ~ 100m AM放送 高周波誘電加熱
HF 短波(ラジオ波) 3MHz ~ 30MHz 100m ~ 10m FM放送 高周波誘電加熱
プラズマ励起
VHF 超短波(テレビ波) 30MHz ~ 300MHz 10m ~ 1m テレビ放送 高周波誘電加熱
プラズマ励起
UHF 極超短波(テレビ波) 300MHz ~ 3GHz 1m ~ 10cm 無線電話 マイクロ波加熱
SHF マイクロ波 3GHz ~ 30GHz 10cm ~ 1cm レーダー 高周波誘電加熱
プラズマ励起
EHF ミリ波 30GHz ~ 300GHz 1cm ~ 1mm - -
サブミリ波 300GHz ~ 3THz 1mm ~ 0.11mm - -
光の領域 赤外線
=30THz ~ 384THz
可視光
=30THz ~ 384THz
紫外線
=750THz ~ 1PHz
X線、γ線
超音波 3KHz ~ 30kHz 100km ~ 10km ※超音波は音波、電磁波ではない。
参考まで 水の波や音の波(音波)は、物体の波動による振動で縦波
電磁波は、『電場と磁場の振動が対となって空間を伝わる横波』であり『電子を揺り動かす波』
逆に、『電磁波は電子の振動により発生する波』とも言える

高周波装置の使用許可

・ 高周波利用設備としての高周波加熱装置は、公共の電波利用を管理する観点から、電波法に基づいて総務省総合通信局に利用許可の申請を行い、利用許可状を得て使用することとなっています。

・ 但し、周波数が9KHz以下の場合、出力が50W以下場合、更に、ISM Bandと称される特定周波数を利用する装置の場合などの 例外規定があります

・ 許可申請は、高周波加熱装置の新設、増設、移転、廃棄などが発生した場合には、必ず届出を行う事が必要です。

・ 許可申請については、各装置メーカーとご相談下さい。

電波障害とノイズ

・ 一般の高周波加熱装置の場合、基本周波数と同時に、その整数倍の高調波と呼ばれる電波が派生します。従って、テレビ、ラジオや防災無線などの他の電波利用設備に対して電波障害を引き起こす可能性の要素があります。

・ 特に、高周波誘電加熱装置で使用している周波数は放送電波に近いために、電波障害の原因となりやすくなりますので、シールドなどの手法を使って放射される電波の強さ(漏洩電界強度)を抑える必要があります。

・ 電波法では電波障害の観点から各種機器からの不要電波(妨害波)の規制を行っていますが、ノイズについては、高周波設備に限らず、CISPR(国際無線障害特別委員会)などの国際的機関にて各種の規制や勧告をおこなっています。
CISPR : Comite International Special des Perturbations Radioelectriques

・ ノイズの問題については、高周波設備から放射される電波の強さと、電波を受けた他の設備のノイズに対する免疫力の相関関係があります。一般的には高い周波数ほど波長が短く、反射が大きいためにノイズ原因となる場合があると言われています。

高周波装置の安全性

・ 高周波装置の安全性については、「高電圧や大電流による感電や火傷の危険性」、「電磁波による生体への悪影響」の両方を考える必要があります。

・ 「高電圧や大電流による感電と火傷の危険性」については、装置メーカーと使用者側で十分に打合せを行い、装置の使い易さと安全性の確保の観点から適切な対策を講じる必要があります。

・ 「電磁波による生体への悪影響」については、電界による人体の温度上昇による影響や磁界による細胞への影響など、様々な議論がなされています。これは、高周波加熱装置に限らず、携帯電話、高圧電線やリニヤモーターカーなどによる影響も含めて議論や検証がなされています。

・ 人体が電磁波によりその生体に何らかの影響があることは事実ですが、人間の生活環境は電磁波に囲まれており、電磁波の影響を遮断する事は出来ません。

・ 高周波加熱装置の場合は、一般的に大きな出力を使用するために、必然的に被爆量も大きくなりますので、装置側と使用者側の双方で、十分に説明と理解をもって対処する事が望ましいと考えます。

© 2008 I.mecs Co., Ltd.